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人間の状況認識がいかに近視眼であるかについて、先日あるテレビ番組に出た経済ジャーナリストが興味深い発言をしていた。
「20年、30年前にトランプの誕生を予測した者がいたか。20年、30年後の未来とは人間の予測が届かない十分な期間だ」
シンプルだが腑に落ちる見識だと思う。
未来の予測は人間の飽くなき欲望であり、現在と過去の教訓から予測を試みるが、うまくいった例を私はしらない。
そんな検証をした研究すらまともにありはしないだろう。
未来の予測は大いに楽しめる面もあるが、未来を手繰り寄せるのは困難。それを実現しようとしたら、強力な権力による長年の統制をもってするでしか不可能だ。
それゆえに、やはり権力者の責任は重い。デモクラシーによる権力監視が正当化され得るとしても、「国民による監視」がいかに近視眼的であるかを自覚しないままの監視は、想定外の悪夢を輝かしい未来の代わりに手繰り寄せる結果となるだろう。
明日は今日より悪くなる。
未来を語る際にこの構えを忘れると、特に外交において大惨事を招く恐れがある。
希望と夢に霞んだ瞳では、足元にまとわりつく蜘蛛の巣のような現実を引きずっているのにいつまでも気付かず、新しく開拓したはずの未来にまで古い蜘蛛の侵入を許してしまうのだ。