lulu lalala's blog

確かかなと思った言葉を気ままに。

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

【小説】ディナーのあと⑧ カンノーロを食した後、アマーロをストレートで飲み干す

「どうしてこんなところに、朱美さん」 「旦那と喧嘩してね、家出中」 「また? でもどうしてここに?」 「あなたがいるっていうから、ついでよ。あなたの笑顔、定期的に眺めておかないと寂しくって。まさか道端で会えるとは想像してなかったわ」 「こっちも…

【小説】ディナーのあと⑦ 思春期は先の知れない将来、今は見通せてしまう将来への恐れで心が葛藤する

「駄目、泣いちゃヤダよ」 「安西、それはないよ」 上原と唯はそれぞれのやり方で真実を慰め、安西を非難した。 「すいません、もう大丈夫です……。私、副支配人の恋の昔話が聞きたいんですけど」 「ええ? 急な転換だな。その流れまだ続いてたの?」 「もち…

【小説】ディナーのあと⑥ 今は小難しい哲学や国際情勢なんかより、恋の話でもしたい気分

商店街の一角にある喫茶店に移動し待っていると、上原がやってきた。 安西と真実はぺこりと頭を下げ、唯はにっこり笑う。 「こんにちは。勇人、まだ飽きてないか? 一体どうやったらこんな組み合わせになるんだい。三人は知り合いじゃないだろ」 「偶然なの…

【小説】ディナーのあと⑤ 先輩は大雑把なくせに気が弱い

唯は輸入物の食料品店に入ってみることにした。 「知らないパッケージがいっぱい。これは何、スパイス? 勇人、勝手に触ったら駄目だよ」 住み慣れた街での異国の雰囲気に、感性がちょっと陽気になる。 その唯と同じ変化が起きているとみられる二人組が店内…

【小説】ディナーのあと④ 両親が離婚し、それなのに平然と物事が進む世の中で

この日の営業が終わり、一息ついていたスタッフ全員が集められた。 「みんな、いつもいつもご苦労様、このリストランテの誇りたちよ!」 店のオーナー、フランチェスコ大滝が大きな身振り手振りを交え話しだす。光沢のあるスーツに、片手にはワイン、お決ま…

【小説】ディナーのあと③ 本心が読み取れない表情で耳の穴をほじる

着替えが終わった上原と斎藤は、それぞれの役割に就こうとする。 「じゃあ、一日よろしくな」 「ああ」 「あの返事は明日が期限だ、忘れてないな?」 「ああ……」 「そうか。若干暑くなりそうだ、水は冷ためでもいいかもな」 この二人が好きな映画に、ディナ…

【小説】ディナーのあと② 俺ごときに料理以外の影響も受けているようじゃ、人としては半人前以下だ

上原はウィスキーを瓶から飲んだ。 「返事は明後日まで、だったな」 店の同僚から独立しようと誘われていた。浮かない日々に、ふと訪れた転機の可能性。自分の力で動かした可能性ではないから、取り扱いには慎重だ。返事も伸ばしてもらいたいと思っている。 …

【小説】ディナーのあと① 一度死ねたら幸せになれるかも

もし一度死に、しかし生き返ることができるとしたら、みな一度は死んでみるのではないか。 信頼できる友人がいない、恋人に裏切られた、家族を失った、やりたい仕事がない、事業に失敗した、金がない、あいつが気に入らない、あいつも妬ましい、世の中がむか…

鉄血宰相ビスマルク傳 19 新帝国建設後の対外経綸

一四 統一の大業は平和的経綸の一手段 第五章 新帝国建設後の対外経綸 一 列国の畏敬の焦点となる ニ 不和と現状維持の要 一四 統一の大業は平和的経綸の一手段 ドイツ帝国はかくの如くにしてビスマルクの胸算を追うてついに成り、爾来欧州国際政局の上に要…

鉄血宰相ビスマルク傳 18 普王、ドイツ皇帝の冠を戴く

一一 講和漸くにして成る 十二 普王ドイツ皇帝の冠を戴く 十三 議会における講和報告演説 一一 講和漸くにして成る 戦局はパリの開城とともに大段落を告げた。まず二月二十六日正午を限りとする休戦の約成り、四月二十一日、ビスマルクは仏国全権チェールと…

鉄血宰相ビスマルク傳 17 お話にならず

一〇 作戦上の優劣お話しにならず 外交関係がかくプロシアにとりて有利であったに加え、作戦上の優劣に至りては、普仏両軍の差異はほとんどお話しにならなかった。 仏軍は装備において欠陥だらけで、その堂々たる軍団中には、単に紙上の軍団で実態にないもの…