lulu lalala's blog

確かかなと思った言葉を気ままに。

小説

【小説連載】刑事堀部(5)~開戦 その5

サエはみよ子のいびりから早く逃れたく、たどたどしく弁明しようとするのだが、 「牧田さん、最近落ち着きがないんじゃなくて?」 とか、 「授業に集中してる?」 だとかの次には、 「とりわけ私の授業でぼうっとしてない?」 や、 「あなた、まだ子供なのだ…

【小説連載】刑事堀部(4)~開戦 その4

若くて、美人、それに賢い。 こうした才色兼備が思春期の女子ばかりの校内で人気を得るには、こつがあった。愛嬌だ。サエが通う高等女学校の生徒で、その最たるが、5学年の古谷スミレである。 社長令嬢の境遇に甘んじることなく、頭が冴え、同窓への目配り…

【小説連載】刑事堀部(3)~開戦 その3

「何ですか?」 じっと後を付いてくる青年に少女はたまりかねたのだ。 「君、奇麗だね」 少女の両耳がほんのり赤らむのを篤志は見逃さない。 「失礼。奇麗だなんて聞き飽きてるでしょう。見るからに、もてそうだ」 「そんなことありません……」 「儚いね。不…

【小説連載】刑事堀部(2)~開戦 その2

「こちらです」 それから道中、若者は会話に紛れ、堀部とやらを観察した。 「自然発火だと思っていましたが、事件性があるのですか?」 「いや、念のためにというやつです」 思いのほか慇懃な態度の堀部に、若者は気を許して話してしまう。 「林業が島の生命…

【小説連載】刑事堀部(1)~開戦 その1

1 開戦 1945年8月5日。 樺太で今年最初の山火事だった。 「もっとや、もっと!」 「走れ走れ!」 駆け付けた島民らは自然鎮火など待ってられず、腹から出る怒声で火を吹き消さんばかりの威勢、かえって壮観である。 幸いにも火の手はそれほどでもなく…

【小説連載】アイガーリ(I got it !)~プロ球団の女スカウト~最終話、始まりの始まり

あらすじ ドラフトの急きょ終了の説明を求め、周に詰め寄る夕子だったが、結果は覆せない。 大泉に会い、謝罪する夕子を大泉はある場所へ連れ出した。ひたすら投球練習を繰り返す竜を目の当たりにする夕子。 そこへ、夕子の娘で野球部マネージャーの妙が現れ…

【小説連載】アイガーリ(I got it !)~プロ球団の女スカウト~後編の戯れ

あらすじ ドラフト会議当日。夕子の戦略で指名が進み、いよいよ竜を選択する番に。しかし・・・。 4 いよいよ運命の日。 貸し切られた高級ホテルの大広間がドラフト会場である。 マスコミとファンらも大勢押し寄せ、時が来るのが待ちきれない。赤い絨毯の上…

【小説連載】アイガーリ(I got it !)~プロ球団の女スカウト~中編

あらすじ フライハイヤーズの編成会議。夕子が推す下手投げの高校生左腕、竜に興味を示す周。その活躍を夕子は約束し、父親の大泉にも竜を獲ると伝える。 3 この日の昼前、智は勤め先の建設会社で社員らと打ち合わせだった。 現在進行中の工事の件で、工期…

【小説連載】アイガーリ(I got it !)~プロ球団の女スカウト~前編

あらすじ プロ野球選手の引退試合が開かれた、ある日。引退を惜しむファンたちと、試合を観戦する桐生夕子。プロ球団フライハイヤーズのチーム編成担当である夕子は、彼らに「もっと面白い野球を見せる」と宣言する。 目次 1 2 1 球場のスタンドが激しく…