騎士道戰隊ナイト連煉憐(レン)ジャー
〈登場人物〉
赤井(27)…部隊長
青柳(30)…その仲間
緑子(23)…その仲間
黒部(27)…その仲間
桜(26)…その仲間
白河指令(42)…戦隊指令官
副指令A(40)…白河の部下
副指令B(39)…白河の部下
一般人(20)…通りすがり
〈その3の続き〉
赤井「いつでも来い。次は必ず……」
=五幕=
ビルの屋上。
風で旗がなびく。
青柳「へっくし! うう、さぶ。この戦闘服、もう少し防寒性があったらな」
緑子「しっかり監視してくださいね」
青柳「このビルの屋上からなら丸見えよ。悪かったな。お前、ホントは赤井と監視につきたかっただろ」
緑子「な、何を。不謹慎ですよ」
青柳「恥ずかしがるなよ。お似合いだと思ってんだからさ」
緑子「適当なこと言わないでください」
青柳「適当なもんか。俺、今すっごく人の恋路を応援したい気分なのよ。あの手のタイプはだな、こう、内面の深ーい部分を察してやると、いちころだ。うん、間違いない」
緑子「ふ、深い部分? 馬鹿馬鹿しい……」
別のビルの屋上。
風に吹かれ、転がる空き缶。
黒部「魔物を見つけたらすぐ知らせろ。俺が始末する」
桜「はいはい」
黒部「お前も式典には出なかったんだな。どこへ行ってた」
桜「家よ。ずっと空けっぱなしだったんだから、そっちの方が気になるでしょ。おかげで、魔物退治にも間に合ったんだから。あの現場の近くなの、私の家」
黒部「間に合ってないだろ。犠牲者が出た。次はもっと脚を鍛えるんだな」
また別のビルの屋上。
冷たい風。
赤井「奴らは、どこから来た……」
風でなびく旗。
緑子「ええっ! 青柳さん、奥さんと別れるかもしれないんですか?」
青柳「そうなのよ。あいつ、俺が留守してる間に他の男とできやがって。今日、めでたくそいつと鉢合わせよ」
緑子「うわあ、修羅場ですね」
青柳「命を懸けた男の末路がさあ、こんなもんなの?」
緑子「奥さんも寂しかったんですよ」
青柳「それ! あの男もぬかしてやがった。『頼子さんはぁ、心身ともに疲れ切っていたんですぅ』。人の嫁の名前を気安く呼ぶんじゃねえっての。けどさ、そんな傷付いた俺を、黒部の奴が励ましてくれたよ」
緑子「へえ」
青柳「やっぱ、あれだな。戦争は怖いし嫌いだけど、戦友ってのはいいもんだよな」
緑子「今頃気付いたんですか? おそっ」
冷たい風、強くなる。
赤井「いや。それなのに、どうして、どうして俺たちは……知っていたんだ? あのことを……」
風で空き缶が転がる。
踏みつぶされる空き缶。
桜「そろそろ、効き目が切れる頃ね」
黒部「何?」
剣が突き刺さる音。
血が滴り落ちる。
黒部「な……」
桜「そうなる前に」
黒部「お、お前……」
剣を引き抜く音。
血が飛び散る。
崩れ落ちる黒部。
桜「とりあえず、1匹」
きーん、と激しい音が鳴る。
各自膝をつく音。
赤井「うっ。こ、これは……」
きーん、と鳴る激しい音。
緑子「きゃあ! 頭が、割れる!」
青柳「な、何なんだ、何なんだ、この音は!」
机から書物が崩れる。
白河指令「こ、この音はどこから……。違う、頭の中が鳴っている。そ、それに、同時に浮かぶ、このビジョンは……」
きーん、と鳴る激しい音。
赤井「この映像は、記憶……。いじられた記憶が、戻ってきてるのか? う、ああっ!」
ショートするネオン。
桜「魔物の王が1人だけなんて、誰が決めたのかしら?」
きーん、と鳴る音、激しさを増す。
緑子「い、嫌ぁー!」
青柳「ああああっ!」
冷たい風。
赤井「っはっは……。まさか、桜が……黒部」
風でなびく旗。
青柳「そ、そんな。何かの間違いだろ。桜さんが」
緑子「はあ、はあ。とにかく、今は桜さんと一緒にいる、いや、桜さんなんて人は最初からいなかった。黒部さんが心配です」
青柳「黒部!」
高いところから、
桜「心配なんて必要ないわ。あなたたちも、すぐに逝くんだから」
青柳「お、お前!」
緑子「浮いてる……」
上空から着地する音。
桜「どう? 夢から醒めた気分は」
青柳「黒部はどうした!」
ぽんっ、とお腹を叩く音。
桜「喰った」
緑子「そんな……」
青柳「嘘だ。あいつが、お前なんかにやられるはずがない」
桜「これは本当。と言っても信じてもらえないわね。ああ、そうだ。証拠があるわ」
桜、「ぷっ!」と何かを吐く。
軽くて硬いものが転がる音。
緑子「これって……」
桜「黒部君の骨。信じてくれた?」
青柳「う、うう……。おおおっ!」
振り下ろす剣の風圧。
剣と剣が衝突する。
桜「駄目よ、力んで突いちゃ。女は優しく扱わないと」
青柳「ほざけ!」
剣撃を打ち合う音。
緑子「……一緒に戦ったのは偽りだった。出会ったあの日からずっと。黒部さんまで……。青柳さん、援護します!」
乱れ飛ぶ剣撃。
コンクリートが弾ける音。
桜「いいじゃない緑子。あなたは特別に赤井君の前で喰ってあげる。それとも、逆の方が好みかしら?」
緑子「うわああ!」
青柳「……剣先の充エネ絶頂。緑子、どけっ!」
光線が放たれる。
桜「ふんっ。はああ!」
剣が光線を受け止め、高速ドリルのような衝撃音。
桜「はあああ! ああっ!」
光線が四方八方に飛び散る。
離れた建物が爆発する。
桜「早い男は嫌いよ」
青柳「そ、そんな、光線を斬りやがった……」
緑子「あ、赤井さん……」
・・・3匹の魔物の雄叫び。
民衆の悲鳴。
光線が放たれる。
2匹の魔物が爆死する。
赤井「1匹外した、飛べる奴か!」
翼で舞う魔物、滑空してくる。
爪と剣の衝突。
地面を削りながら滑る赤井と魔物。
魔物の雄叫び。
赤井「地味に手強い」
鉄柱とぶつかる音。
よだれを垂らす魔物。
赤井「きったねえ、なっ!」
と、殴りつける。
即座に剣撃。
魔物の悲鳴。
赤井「これで、もう飛べない」
苦悶する魔物、喉を鳴らして逃げ出す。
一般人「へ? え? やだ、こっち来るな!」
笑う魔物。
一般人「た、助けて……」
剣を素振りで振り下ろす音。
赤井「たった1人の犠牲で10万人を救えたら、安いもんだ」
一般人「ひい……」
赤井「剣先の充エネ、オーケー」
わめく魔物。
剣先から火花が散る。
赤井「ナイトレンジャーを、舐めるなよっ!」
魔物、怯えた犬のような声で逃げ出す。
放たれる光線。
爆発。
一般人「助かった……。あ、ありがとうございます、って。あ、あれ?」
・・・廊下を革靴で歩く音。
白河指令「殺した人間の身分を奪い、なりすましていたのです。そうして組織に潜入し、魔力で我々の記憶を操った。宿敵だったもう1人の王を、人類に倒させるために」
副指令A「王には赤井たちが倒したのと、あの桜の2人がいて、そのどちらも倒さなければ、この世から魔物は消えない」
白河指令「いえ、事態はもっと深刻かもしれないのです。桜、いや、桜に化けていた魔物に刷り込まれたのは『王は1人だけ』ということ。3人目、4人目の王が潜んでいてもおかしくありません」
副指令B「何ということだ」
副指令A「既に青柳と緑子が桜、いえ、もう1人の王と交戦中との報告が。他にも、数体の魔物が出現したとの情報があります」
白河指令「怖いのはやはり王です。王討伐にできる限りの増援を」