騎士道戰隊ナイト連煉憐(レン)ジャー
〈登場人物〉
赤井(27)…部隊長
青柳(30)…その仲間
緑子(23)…その仲間
黒部(27)…その仲間
桜(26)…その仲間
魔物の王(年齢不詳)…魔物たちの王
=一幕=
激しい雷雨。
ぬかるんだ地面を駆ける音。
青柳「はあ、はあ……」
こける。
青柳「いったぁ。てか、きったね」
爪をこすり合わせ、近付いてくる足音。
青柳「ここまでか……」
ぬかるみに飛び込んでくる、別の足音。
赤井「そこまでだ!」
黒部「追い詰められたのは、お前の方だ」
青柳「ばか野郎、おっせえよ!」
轟く雷鳴。
もみ合う音。
魔物の叫び声。
赤井「うるさい! こいつ、結構パワーあるな。振り払われるなよ、黒部!」
黒部「お前がな!」
青柳「何してんだよ、とっとと片付けろ!」
魔物の叫び声、一段と大きくなる。
赤井「おおお!」
黒部「あああ!」
青柳「いい加減、観念しろ!」
赤井「ここだ、桜!」
ばさばさっ、と上空から降ってくる音。
桜「はああ!」
強烈な剣撃。
もだえる魔物。
桜「次よ。やって、緑子!」
茂みから飛び出てくる音。
緑子「さあ出番だよ。私の可愛い、サーベルタイガー」
吠えながら駆ける、サーベルタイガー。
噛みつく音。
苦しむ魔物の声。
赤井と黒部、振り払われる。
赤井「ちっ」
黒部「しぶとい奴」
緑子「あんたはよくやったよ。私の可愛い、タイガーちゃん」
青柳「おいリーダー、こっから、どうすんだ?」
桜「赤井君」
赤井「全員で決めるぞ。抜け!」
剣を抜く音。
さらに大きくなる魔物の声。
赤井「行くぞぉ! おおお!」
黒部「あああ!」
青柳「うらら!」
桜「はああ!」
緑子「やあ!」
・・・ちゅんちゅん、と小鳥のさえずり。
濡れた布をばさばさと払う音。
緑子「夕べの雨が嘘みたい。ちょっと青柳さん、私のタイガーちゃんに何あげてるんです?」
青柳「木の実だよ。草食に教育し直そうと思ってな。万が一この鋭い牙で襲われたら、かなわないからな」
緑子「タイガーちゃんはそんな野蛮なことしません。あげるなら干し肉か、レバーペーストにしてください」
青柳「そんないいものあげてたの? 兵士の俺らより全然いい待遇じゃん。なあ黒部」
黒部「俺は、お前と同じ待遇ってのが気に入らない。政府に文句を言いたいね」
青柳「何を~。人を囮に使いやがったくせに」
黒部「何だ。囮が好きなのかと思った」
青柳「てんめえ」
緑子「ちょっと二人とも。あっ、赤井さんと桜さん、戻ってきた」
草むらを歩く音。
赤井「ただいま」
緑子「お帰りなさい。どうでした?」
赤井「間違いない。あそこにいる」
緑子「じゃあ、休憩もここまで」
桜「みんな、準備はいい?」
黒部「もちろんだ」
青柳「ええっと、俺はちょっと……」
黒部「ふん。とうとう囮にも使えないか」
青柳「何だと」
赤井「青柳」
青柳「違うんだ……。人間と魔物たちとの戦いが始まってから、もう7年。その決着 を、まさか俺たちがつけることになるなんてよ……。実感が湧かねえんだ」
赤井「それは、俺も同じだ」
緑子「初めは150人いた私たちの部隊も、今はたったの5人ですからね」
桜「そう。けど、私たちは辿り着いた」
青柳「ついに辿り着いちまった。ああもう、俺は絶対死なねえからな」
黒部「ふん、これだから徴兵は」
青柳「はいはい、志願兵様はお偉いですな」
赤井「みんな、戦闘服と銃剣の状態を確認しろ。昨日までの敵とは違う。世界の命運が懸かってる、最終決戦だ」
=二幕=
地面が割れる音。
衝撃波が二度三度響く。
青柳「ぐはっ、はっ。……やっぱり、死んじまうのかな俺」
赤井「はあ、はあ……。黒部、挟み撃ちだ」
黒部「くそったれ。おらぁ!」
剣を弾く硬い音。
赤井「……くっ」
桜「二人とも、どいて!」
緑子「剣先の充エネ完了。いっけぇー!」
剣の先端から光線が放たれる。
爆発音。
赤井「直撃だ。しかし……」
突風が舞う。
魔物の王「無駄だ。卑しい人間ども」
衝撃波。
岩に叩きつけられる5人と1匹の音。
緑子「これが魔物の王の力……。ホント死んじゃう」
青柳「いてぇ、いてぇよぉ。身体能力が10倍になる戦闘服着てるのによ……」
赤井「王の、奴の表面をいくら叩いても駄目だ。自慢気な大口に、ぶち込むしかない」
黒部「だとよ。囮、お前の番だ」
青柳「ふっざけんなよ! おっかなくて動けねえよ!」
黒部「ああ、そうかい。情けねえ!」
地面を蹴って飛び上がる音。
黒部「あああ!」
剣を受け止める音。
黒部「ぐぐ……」
魔物の王「卑しい人間ども。ひれ伏すがいい」
ぐぐっと首を絞めつける音。
黒部「ご、か……」
魔物の王「この世の真理は、貴様ら人間の絶滅を望んでいる。聞こえないのか? 甘んじて受ける時が来たのだ、天罰を」
剣を強く握る音。
青柳「ちくしょう。死にたくねえ。俺には家族がいるんだ。独り身のあいつとは違う……」
緑子「黒部さん!」
青柳「ちくしょう。俺は死にたくねえ。だから、お前も死ぬんじゃねえよ!」
飛び上がる音。
乱れ打たれる剣撃。
青柳「うらら! 離せってんだよ、このボケ!」
赤井「桜、お前の銃剣を貸してくれ」
桜「どうする気?」
赤井「あいつの口の中で、二つのエネルギーをバーストさせる」
緑子「私が援護します」
赤井「これで最後だ。ここで勝てば名誉も富も思うがまま。そのためにも、生きて勝つ」
衝撃波の中を疾走する。
緑子「はっ!」
放たれる光線。
赤井「おお!」
岩を砕く音。
赤井「お前たちがなぜ現れたのか、理由は知らない。だが、お前たちは人を無残に殺す。だから滅ぼす」
魔物の王「愚かすぎる。罪人どもに永遠の死を。ごああ!」
無数の落雷。
緑子「きゃあ!」
崩れ落ちてくる岩石。
吠えるサーベルタイガー。
緑子を突き飛ばす音。
緑子「ううっ……。えっ、タイガー?」
サーベルタイガーのか細い呻き。
高速の剣撃が続く。
赤井「はあ、はあ……」
青柳「ちくしょう、ちくしょう!」
黒部「あ、あ……ああっ!」
ずばっ、と剣が肉に食い込む音。
滴り落ちる血。
魔物の王「馬鹿な!」
黒部「はは、やったぜ……」
魔物の王「貴様ぁ。死ね!」
桜「やめて!」
魔物の王「お前は……」
青柳「赤井、今だっ!」
赤井「剣先の充エネ、オーケー。ツインブレード!」
強烈な閃光。
魔物の王「ご、ごふっ!」
赤井「魔物にも来世ってあるのか? いや、人間にもあるのかどうか分かりはしない。あったとしても、お前には二度と会いたくないけどなっ!」
魔物の王「この人間どもぉ。ごああ!」
大爆発。