lulu lalala's blog

確かかなと思った言葉を気ままに。

ナイト連煉憐(レン)ジャー その3 変身しろ何度でも

騎士道戰隊ナイト連煉憐(レン)ジャー

 

〈登場人物〉

赤井(27)…部隊長

青柳(30)…その仲間

緑子(23)…その仲間

黒部(27)…その仲間

桜(26)…その仲間

 

白河指令(42)…戦隊指令官

副指令A(40)…白河の部下

副指令B(39)…白河の部下

 

その2の続き〉

緑子「青柳さんも今頃、家族と食事ですか」

赤井「どうかな」

緑子「赤井さんは、この先どうするんです?」

赤井「俺は職業軍人だから、また別の部隊に配属されるさ。緑子はどうするんだ」

緑子「とりあえず、ペットショップの仕事に戻りますかね。けど、そんなことより私、早く結婚したいんです」

赤井「決まったら教えてよ。戦友として、ご祝儀くらい出したいから」

緑子「あ、赤井さんは、結婚願望とかないんですか?」

赤井「うーん、ないかな」

緑子「駄目ですよ。赤井さんの遺伝子は後世のために絶対残さないと」

 

 離れたテーブルでグラスが割れる。

 

緑子「びっくりした。あれ? 赤井さん、通りの向こう、ちょっと騒がしくないですか」

赤井「本当だ。まだハロウィーンの時期じゃないよな」

 

 ・・・河原のせせらぎ。

 剣の素振りの音。

 

黒部「ふっ、ふっ」

 

 顔を洗う黒部。

 

黒部「はあ。うん? あいつは……」

 

 河原のせせらぎ。

 

青柳「ちくしょう……」

黒部「おい」

青柳「うわっ、とっとと。びっくりしたぁ。おどかすんじゃねえよ」

黒部「お前、泣いてるのか?」

青柳「な、泣いてなんかねえよ」

 

 地べたに座る音。

 

青柳「隣に座るんじゃねえよ」

黒部「お前、酒持ってないか」

青柳「持ってねえよ」

黒部「そうか。どうした、家族にでも疎まれたか」

青柳「うっ……ど、どうしてそれを」

黒部「よくあることだ。例えば、夫が出兵中、女房が別の男をつくる、とかな。……図星か」

青柳「俺、おかしくなっちまったのかな。こうしてると、あんなに嫌だった戦場が懐かしく思えてくる」

黒部「後遺症だ。よくあることだ」

青柳「じゃ、じゃあ、これはどうだ。妻だけじゃない、可愛かった子供の顔まで醜く思えてくるんだ」

黒部「それも同じことだ」

青柳「さすが、百戦錬磨は違うね」

黒部「俺は、お前より長く戦っていた。だから言えることもある。お前は強者だ。まあ、あの赤井は別格だがな」

青柳「強者だなんて。俺には一生縁のない言葉と思ってた」

黒部「自信を持て。その上で、もう一度、家族と話してみたらいいんじゃないか」

 

 鈴虫の鳴き声。

 

青柳「どっこいしょ。なあ、今夜だけお前んちに泊めてくれない?」

黒部「嫌だ」

青柳「頼むよ。一晩だけさあ、酒も奢る」

黒部「ったく。……おい、あれは何だ?」

青柳「え?」

 

 

=四幕=

 

 群衆の悲鳴。

 爆発音。

 急ブレーキでクラッシュする車。

 駆け付ける足音。

 

緑子「赤井さん!」

赤井「こいつは、まさか……」

 

 魔物の雄叫び。

 

緑子「嘘……。ハロウィーンの仮装じゃないよね?」

 

 魔物の雄叫び。

 無数の弾丸が放たれ、人々を殺傷する。

 

赤井「やめろ!」

緑子「駄目です! 私たち今、戦闘服を着ていません!」

 

 勢いよく開く扉。

 

白河指令「何事です」

副指令A「魔物が、市街地に魔物が出現しました!」

白河指令「そんな馬鹿な!」

副指令A「既に、多数の死傷者が出ています!」

白河指令「すぐに護衛兵を向かわせなさい。どうして、こんなことが……」

 

 建物や車に着弾する魔物の弾丸。

 

緑子「今は避難しないと! きゃあ」

 

 ものにつまづく音。

 

赤井「大丈夫か?」

緑子「つまづいて転んだだけです。え? この子……。赤井さん、この子たちは昼間の……」

赤井「くっ……」

 

 魔物の笑いと銃撃音。

 ばさばさっ、と上空を舞う音。

 

緑子「あれは、桜さん!」

桜「はああ!」

 

 剣撃が決まる。

 もだえる魔物。

 とどめの一刺し。

 

 小声で、

桜「やり過ぎだわ」

 

 ・・・救急車のサイレン。

 

緑子「情けないです。魔物の王を倒したナイトも戦闘服と銃剣がなければ、低級の魔物にすら勝てないなんて」

赤井「気を緩め過ぎた。俺のせいだ」

緑子「そんな。でも、どうしてあの魔物は……。王が死んで魔力はなくなったはずなのに」

赤井「分からない。人類の知らない秘密が、奴らにはあるのかもしれない」

緑子「秘密……。じゃあ、もしかして他にも魔物が」

赤井「可能性はある。桜、ありがとう。よく駆け付けてくれた」

桜「たまたまよ」

緑子「桜さん、さすがです」

桜「2人が無事でよかった。あなたたちさえ生き残っていれば、人類は戦えるものね」

緑子「はあ……」

 

 「みんなぁ!」と青柳の声。

 

青柳「大変だったな。ひでえ……。一体どうして」

黒部「魔物を殺ったのは?」

赤井「桜だ」

黒部「腕を上げたな。あの太刀筋。ハイクラスの魔物でも、ひとたまりもなかったろう」

桜「ありがとう」

赤井「黒部、感じるか?」

黒部「ああ。魔物は死んだのに妖気が消えていない。惨劇は、また起こるぞ」

 

 机を叩く音。

 

副指令B「一体どういうわけだ! なぜまた魔物が現れた? 王は倒したはずじゃなかったのか!」

副指令A「もしや王を倒したというのがガセだったのでは? 白河指令!」

白河指令「魔物には未知の部分が多くありました。生態系の突然変異という説から、政府の陰謀、科学者の悪意の産物、または地獄からの使者という説まで。その起源は今だ謎のままです。とにかく、今は昼夜を問わず、警戒に当たりなさい」

副指令A「市民のパニックはどうします?」

白河指令「それも含めての警戒です! 我々は王を倒した。これは事実です。実際、各地で魔物の消滅が報告されています。仮に、何らかの理由で生き残りがいても、数は限られるでしょう。冷静に対処なさい!」

 

 冷たい風。

 

赤井「いつでも来い。次は必ず……」

 

続く