lulu lalala's blog

確かかなと思った言葉を気ままに。

ナイト連煉憐(レン)ジャー その5(終) こうして5人がつくる伝説は始まった

その4の続き〉

風でなびく旗。

 

青柳「がはっ。つ、つええ……」

桜「そろそろ赤井君も来る頃かしら。3人になるとさすがに厄介ね。ほら、立ちなさい」

青柳「ち、ちくしょう」

桜「先に逝っててくれる?」

緑子「青柳さん!」

 

 剣で切られる音。

 

桜「寝そべっていられると邪魔だから、落っこちて」

 

 突き飛ばされる音。

 風の音。

 

緑子「あ、ああ……」

桜「衝突まで3秒前。スリ―、トゥー、ワン」

 

 風の音。

 

桜「あら?」

 

 血が垂れる音。

 救急車のサイレン。

 

青柳「うう……」

赤井「青柳。こらえろ。あとは俺がやる」

 

 勢いよく飛び跳ねる音。

 着地。

 

緑子「赤井さん」

桜「思ったより早かったわ」

赤井「脚の鍛え方が違うんだ」

桜「私はね、あなたを殺す気はないの」

赤井「何?」

桜「興味津々なの。魔物の女王が逞しい人間の雄と交わったら、どんな化け物が生まれるか。黒部君には食欲が勝っちゃったけど」

 

 すすり泣く緑子。

 

桜「あなたがあの王を倒した時、私の銃剣を使ってくれたでしょ。あの瞬間、まるで前戯のような幸福を感じたわ」

赤井「よく喋るんだな。寡黙な奴ほど言葉を秘めてるらしいが、とんだ淫語の玉手箱だ」

桜「この卑しさは人間から教わったものよ」

赤井「緑子、青柳はまだ生きてる。お前は動けるか? 遠くへ離れてろ」

緑子「ううっ」

桜「何よ。戦わないって言ってるじゃない。そんな必要ないもの。また、いじってあげる! はああ!」

緑子「赤井さん、また記憶を!」

赤井「緑子、お前の剣を充エネして俺のと重ね合わせろ!」

緑子「剣?」

赤井「早くするんだ!」

緑子「はい!」

 

 二つの剣が重なる音。

 

桜「はああ!」

 

 きーん、と激しい音が鳴る。

 

緑子「あ、赤井さん!」

赤井「動くな、このままだ!」

桜「ああああ!」

 

 きーん、と激しい音。

 徐々に鳴りやむ。

 

 

=六幕=

 

 とんとん、と包丁がまな板を叩く音。

 

頼子「そろそろ、パパを起こしてきて」

鉄平「はーい」

 

 テーブルに食器を並べる音。

 

青柳「おはよう」

頼子「もう、いつになったら1人で起きられるの? あなたは、この世界を魔物から救った英雄なのだから。そんな人が朝に弱いだなんて、かっこ悪いじゃない」

鉄平「そうだよ、パパ」

青柳「悪い。魔物とは夜戦うことが多かったから、その後遺症がな、残ってるんだ」

頼子「もう」

青柳「まだ眠いなあ。あっ、いたたたた。あくびで傷口が」

頼子「大丈夫? 鉄平、お薬取ってきなさい」

 

 ドアが開く音。

 

青柳「じゃあ、行ってくるよ」

頼子「行ってらっしゃい。あんまり辛いようなら、無理しなくていいから」

青柳「なに、このくらいへっちゃらさ」

 

 キス。

 

 ・・・ざっ、と足音。

 

緑子「青柳さん……」

赤井「行こう」

 

 時計の針の音。

 

白河指令「まだ見つけられないのですか」

副指令A「申し訳ありません」

副指令B「人類の裏切り者は必ず」

白河指令「そのセリフは昨日も聞きました。黒部のような犠牲者がまた出ないうちに、探し出すのです」

 

 重いドアが開く。

 

桜「そのセリフは一昨日も聞いたわ、白河『副』指令」

白河指令「桜様」

桜「人手が足りないなら徴兵を増やせばいいじゃない」

白河指令「ですが、これ以上若者に義務を強いるのは」

桜「徴兵は若者の義務、という考えがそもそも間違いなの。中年や老人から徴兵なさい。人探しくらいできるでしょ」

白河指令「その者たちだと仮に赤井たちと戦闘になった場合、対処できないのでは?」

桜「居場所さえ分かれば問題ない。名誉の戦死よ。それにね」

白河指令「はい」

桜「まあいいわ。とにかく、人手は増やすように」

 

 「はっ!」と白河指令たち。

 

 こつこつ、と廊下を歩く音。

 

桜「美味しくないのよね、年寄りは。それにしても、私の魔術から逃れるなんて。あまり野放しにするのはあれだけど、その時は……」

青柳「桜様、おはようございます」

桜「おはよう、青柳君。ご家族はお元気?」

青柳「はい、おかげ様で」

桜「民を統べる立場も、一家の大黒柱も、責任の重さに変わりはないわ。特に青柳君の奥さん、綺麗だから。悪い虫に注意しないと」

青柳「いやあ、あれにそこまでの魅力は」

桜「ふふ。英雄に匹敵する男なんていないものね。その力、民のために尽くして頂戴。最後はあなたが、この世界の鍵になるのだから」

青柳「はっ!」

 

 梟の鳴き声。

 颯爽と駆ける音。

 

緑子「私たち以外は、みんな本当に記憶を改竄されているようですね。私は、赤井さんのおかげで助かりました」

赤井「ツインブレードの応用だ。2刀の剣を重ねてエネルギーを増幅し、シールドを張った。それで記憶を改竄する魔力を弾けないかと思ったが、うまくいった」

 

 ずざっ、と止まる。

 

赤井「行こう。手はず通りに」

緑子「はい。うぅ……」

赤井「泣くな。しっかり話し合ったろ」

緑子「はい……」

 

 爆発。

 警報が鳴る。

 「侵入者だ!」や「赤井だ!」の声。

 また爆発。

 

青柳「赤井!」

赤井「青柳」

 

 剣と剣の衝突。

 

青柳「赤井ぃ、この裏切り者が!」

赤井「裏切り者か。俺が黒部を殺したって、そう刷り込まれたんだな」

青柳「何!」

赤井「けど、それももうじき終わる。おおっ!」

 

 弾き飛ばされ、滑る音。

 

青柳「くっ!」

赤井「出てこい! もう駒は必要ないだろ!」

 

 雷鳴。

 

桜「もう少し、泳がせてもよかったのだけど」

赤井「ふざけろ。もう十分だ」

青柳「桜様!」

赤井「青柳、目を覚ませ。こいつは魔物だ」

青柳「世迷言を」

赤井「俺はここで死んでもいい。だが、お前は生き残れ」

青柳「完全に正気を失ったようだな、赤井」

桜「青柳君、離れてなさい。彼とは2人で話したいの」

赤井「悠長に話す気はない。記憶を変える時間は与えない。その暇もなく瞬殺する。それが、お前に用意した殺し方だ」

桜「緑子はどこ?」

赤井「話す気はないと、言っただろうが!」

 

 剣と剣の衝突。

 

桜「私を瞬殺とは、さすがに大きくですぎね」

赤井「どうだか」

 

 シャッ、と剣を抜く音。

 

桜「その剣!」

赤井「力を貸してくれ、黒部! おおおっ!」

 

 ばちばちっ、と激しい音。

 

赤井「トリプル、バースト!」

桜「これは、私の銃剣の力も利用して!」

赤井「おおおっ!」

桜「ぐ、ぐぐ……」

青柳「さ、桜様!」

 

 バチバチッ、とさらに激しい音。

 

桜「あ、熱い。剣から手が離れない……」

赤井「何倍にも増幅したエネルギーの引力。ここで消滅しろ、俺と一緒に!」

桜「何ぃ!」

赤井「仕上げだ。緑子ぉ!」

 

 剣を構える音。

 

緑子「剣先の充エネ完了。行ってぇ!」

桜「お、おのれ!」

 

 放たれる光線。

 ばちぃっ、と弾ける音。

 

緑子「そんな!」

青柳「桜様は、俺が守る!」

赤井「青柳、邪魔をするな!」

桜「よくやったわ、青柳君。そのまま緑子の光線を受け止めてなさい。どうする赤井君。このままじゃ2人とも死ぬけど、魔力を使える私の方が有利と思わない?」

赤井「くっ……」

桜「あなたの子供欲しかったけど、殺されるくらいなら殺して、喰ってやるわ! ウェルダンは好みじゃないんだけどね!」

赤井「ぐう!」

緑子「赤井さん! ……タイガー、私にあなたの勇気を分けて……。やあ!」

 

 飛び跳ねる音。

 

青柳「飛んだ? どうする気だ!」

緑子「やああ!」

桜「真っ直ぐ降りてくる。私たちの間に、直接剣を叩き込む気?」

赤井「よせ緑子、やめろ!」

緑子「やあああ!」

 

 凄まじい閃光。

 

青柳「こ、この光は! 桜様ぁ!」

 

 大爆発。

 瓦礫が降る音、次第に収まる。

 ・・・ごとっ、と瓦礫が動く。

 

桜「ふ、ふふ。危うく死にかけたけど、失敗したみたいね」

赤井「み、緑……」

桜「銃剣の交差法を扱うには、まだ未熟だったようね。それでも、お互い満身創痍。けど」

青柳「さ、桜様」

桜「これで2対1。さあ、いい加減諦めて私に従いなさい。楽しいことしてあげる」

青柳「桜様、自分によい考えが」

桜「うん?」

 

 剣が突き刺さる音。

 

桜「なっ……」

赤井「青、柳?」

青柳「さっきの光で、魔術が解けちまったようだ。ちくしょう俺は、俺はぁ……。赤井ぃ、寝てんじゃねえ、今だぁ!」

赤井「お前。……お、おおおお!」

桜「き、貴様ら! ぐはっ! い、卑しい人間ごときぃ!」

赤井「おおお!」

 

 一刀両断。

 

 ぽつぽつと雨が降りだす。

 

赤井「はあ、はあ」

青柳「すまない、赤井。うう、黒部ぇ、緑子ぉ……」

赤井「はあ、はあ……」

 

 

=七幕=

 

 重い扉が閉じる。

 

白河指令「我々は、まだ完全に魔物には勝利していません。赤井。あなたに戦隊の最高位、レッドナイトの称号を授けます。潜んでいる魔物を探し出し、討伐するのです」

赤井「はっ」

白河指令「ところで赤井。他にも魔物の探索・討伐隊を派遣しようと思うのですが、人手に限りがあります。一部隊の編成はどうしたらよいと思いますか?」

赤井「はい。それでしたら……」

 

 にぎやかな街中。

 

青柳「もう少し休んでいけばいいのに」

赤井「十分だ。これ以上休んだら、腕が鈍る」

青柳「しかし、お前の新しいお仲間たち、本当に大丈夫か? 缶切りもしたことなさそうな、青っちろい若造たちだ」

赤井「ここを出れば変わるよ。お前みたいに」

青柳「だな。いつ帰ってくる?」

赤井「分からない。当分お別れだ」

青柳「リーダーの苦労好きには頭が下がる」

赤井「苦労なら、お前も背負ってるじゃないか。家族問題で」

青柳「それを言うなって。ちくしょう。あの2人の記憶だけは戻らなくてよかったのによ」

赤井「笑ってそう言えるお前が頼もしいよ。……そろそろ時間だ」

青柳「おう。安心して暴れてくれ。お前のいない間、この街は俺が守る」

赤井「ああ」

 

 木々が揺れる音。

 

青柳「行っちまったな……。必ず帰ってこいよ。お前の子孫は、絶対に残さなきゃならないらしいからな。……まったく、この先、世界はどうなることやら。けどもまあ、頼もしい限りだぜ。なあっ!」

 

 木々が優しく揺れる。

 

=終=

 

騎士道戰隊ナイト連煉憐(レン)ジャー

 〈登場人物〉

赤井(27)…部隊長

青柳(30)…その仲間

緑子(23)…その仲間

黒部(27)…その仲間

桜(26)…その仲間(正体は、もう一人の魔物の王)

 

魔物の王(年齢不詳)…魔物たちの王

 

白河指令(42)…戦隊指令官

副指令A(40)…白河の部下

副指令B(39)…白河の部下

 

頼子(30)…青柳の妻

鉄平(8)…その息子

 

若い女A(18)…赤井のファン

若い女B(18)…赤井のファン

男性(30)…頼子の愛人

一般人(20)…通りすがり